この秋、FPGA開発の進め方が変わった――作る時間が短くなって見えてきた、決める時間
これまで4回にわたって、この秋に体験したFPGA開発の変化を書いてきました。前回は、FPGAの設計と自動デバッグについて書きました。
9月、10月になって、回路設計、基板のパターン設計、FPGA内部の設計、CPU側のソフトウェア、そしてデバッグまで、ずいぶん速く進むようになりました。
仕様書も、メールや音声入力をもとに整理できるようになっています。
開発全体が速くなったことで、「何を作りたいのかを整理する時間」と、「実際に始めると決める時間」が、以前より目立つようになりました。
今回は、この二つについて書いてみます。

何を作りたいのかを、言葉にする難しさ
ものを作るときには、まず「何を作りたいのか」を伝える必要があります。
ところが、これを文章にするのは、結構大変です。
頭の中にはイメージがあっても、設計する人に伝わるように整理するのは簡単ではありません。ハードウェアにあまり馴染みがなければ、何を説明すればよいのか、その入口で困ってしまうこともあると思います。
生成AIによって設計作業が速くなっても、この最初の部分で止まってしまったら、なかなか開発へ進めません。
ここを少しでも手伝えないかと考えて、作っているのがFPGAForgeです。
FPGAForgeで、作りたいものを整理する
FPGAForgeは、AIを使って、作りたいものや必要な仕様を整理するためのWebサービスです。
現在はFPGAForgeのホームページで公開しており、改善を続けています。
使い方は、できるだけ簡単にしています。
ホームページにある入力欄へ、何を作りたいのかを書く。音声で入力することもできます。その後、ボタンを押すと、AIが内容を整理します。
入力された内容から、基板やFPGAを作るための条件がどの程度そろっていて、何がまだ足りないのかを確認できる仕組みです。
最初から、きれいな仕様書を用意する必要はありません。まずは自分の言葉で、作りたいものを伝えてもらうところから始められます。
「仕様がなかなか決まらなくて、先へ進めない」
そんな方に、一度使っていただけたらと思っています。
仕様を整理するところまでは、無料で利用できます。その先で、実際の相談や開発のご依頼につながれば、もちろん嬉しいです。
まずは、これまでハードウェアの世界に馴染みがなかった方にも、ものづくりの入口として使ってもらえたらと考えています。
開発が速くなった分、人が決める時間が目立ってきた
仕様を整理しやすくすることと、実際に開発を始めると決めることは、別の話です。最近は、後者にかかる時間も以前より目立つようになりました。
人が判断したり、社内で決裁や承認を進めたりする時間です。
例えば、案件の内容によっては、FPGAの設計を含めて、1か月ほどで試作基板の動作確認まで進められるようになってきました。基板を作るだけでなく、動作を確認するところまでです。本当に速くなったと感じています。
それに対して、開発を始めるための決裁に、1か月以上かかることもあります。
開発そのものに必要な時間より、始めると決めるまでの時間のほうが長い。そんな場面が、以前より目に付くようになりました。
おそらく、判断にかかる時間が急に長くなったわけではありません。作る側の時間が短くなったことで、その割合が大きく見えるようになったのだと思います。
判断や承認の進め方も、少しずつ変わるのかもしれない
もちろん、社内の判断や承認には、それぞれ必要な理由があります。関係者の確認もありますし、予算や責任の整理も必要です。
ただ、開発に数か月かかる前提で組み立てられていた進め方と、短期間で試作できる今の進め方との間に、少し差が出始めているのかもしれません。
仕様の整理には、AIの力を借りられるようになりました。設計やデバッグも、かなり速くなりました。
その先で、何を作るのか、どこまで進めるのか、いつ始めるのかを決めるところには、人の判断が残っています。
作る速さが変わったことで、決めるために必要な情報のまとめ方や、確認の進め方にも、見直せるところが出てきそうです。
例えば、試作で何を確かめたいのか、どこまでできれば次へ進むのかを、先に短く整理しておく。そうしたところから、進め方を変えていけるのかもしれません。
私自身も、開発が速くなった分を、どう仕事全体の進め方につなげていくかを考えているところです。
この変化を、少しずつ共有していきたい
生成AIによって、いろいろなことが変わっています。
私が直接体験しているのは電子回路やFPGAの開発ですが、ほかのものづくりの分野でも、似た変化が起きているのかもしれません。
すべての変化に、すぐ対応する必要はないと思います。ただ、「今は、これぐらいの期間で作れる場合がある」ということを知っているだけでも、計画の立て方や選べる方法は変わってきます。
以前は時間がかかりすぎて難しかったものが、今なら試せるかもしれない。仕様書をうまく書けなくても、話すところから始められるかもしれない。
そうした変化を、実際の開発経験と一緒に伝えていけたらと思っています。
この秋、作るための時間は大きく変わりました。
その中で残っている「何を作るかを決めること」「始めると判断すること」を、どう進めていくのか。
これからは、その部分も含めて、開発の進め方を考えていくことになりそうです。
English Summary
Over the past four articles, I have described how AI has accelerated my FPGA development workflow, from requirements and PCB design to hardware, software, and debugging.
As development becomes faster, the time spent making decisions and obtaining internal approval has become more noticeable. Depending on the scope, some projects can now progress through FPGA design to functional verification of a prototype board in about a month, while approval alone may take longer.
To make the starting point easier, I have made FPGAForge available and am continuing to improve it. Users can describe an idea through text or voice, and AI helps organize the requirements and identify missing information. The initial specification-organizing stage is available free of charge.
The next challenge is connecting faster development with how people define goals, make decisions, and choose when to begin.
