5SQ Zynq基板――GPT-6 Astra+AMD Rossで周辺回路を検証する
ChatGPTを使ったFPGA開発は、以前から試していました。
HDLを生成し、Vivadoプロジェクトを作り、論理合成や配置配線まで進めることは、純粋なFPGAであればかなりできるようになっていました。実際、以前にSpartan-7を使ったときは、大きなエラーもなく配置配線まで進められています。
ところが、Zynqになると話が変わりました。
ZynqにはFPGAに相当するPLだけでなく、ARMプロセッサを含むPSがあります。VivadoのIP Integratorを使ったPS設定やIP接続、Vitis側のソフトウェア作成まで必要になるため、ChatGPTだけではなかなかうまく進みませんでした。
今回、この状況を大きく変えたのがAMD Rossです。
5SQ Zynq基板をUSBで接続し、GPT-6 AstraとAMD Rossを組み合わせて周辺回路の検証を行いました。その結果、私はVitisを一度も開かず、Vivadoも確認のために一度見ただけで、Zynq上のRGB LEDを実際に点灯させるところまで進められました。
これは、かなり衝撃的な体験でした。
AMD Rossとは何か
AMD Rossは、AMDが提供するエージェント型AIアシスタントです。
正式には「AMD Ross Agentic AI Assistant」と呼ばれ、自然言語からAMDの開発ツールを操作するための仕組みとして提供されています。
AMDの公式説明では、主に次の要素で構成されています。
- Vivadoなどへ接続するMCPサーバー
- AMDの公式資料を検索するナレッジベース
- FPGA開発の手順を記述したAgent Skills
- 検証済みの設計例
MCPサーバーを通してAIがVivadoなどのツールセッションへ接続し、AMDの資料や設計手順を参照しながら処理を進める構成です。AMD Rossは特定のAIクライアントに限定されず、Codex CLIなどのMCP対応クライアントからも利用できると案内されています。
2026年9月30日には、AMDからAMD Rossの正式な発表が行われました。

これまでZynqではうまくいかなかった
これまでChatGPTを使ってFPGA開発を試したとき、Spartan-7のような純粋なFPGAでは比較的うまく進みました。
HDLを書かせ、プロジェクトを作り、論理合成と配置配線を実行するところまでは、かなり自動化できていました。
一方、ZynqではIP Integratorを扱う必要があります。
PSの設定、クロック、AXI、周辺インターフェース、PLとの接続など、Zynq固有の構成を理解してプロジェクトを作らなければなりません。
以前ChatGPTだけで試したときには、必要な構成を正しく作れず、意図していないIPを生成して接続し、最終的に動作しないということがありました。
エラーが発生すると、VivadoのログをコピーしてChatGPTへ貼り付け、
「このエラーは何が原因か」
「どこを修正すればよいか」
と聞き、回答を見ながら人間がVivadoへ戻って修正する必要がありました。
つまり、ChatGPTは相談相手にはなりましたが、Vivadoの作業そのものは人間が引き継ぐ必要がありました。
回路図を渡して日本語でプロジェクト作成を依頼
今回は、5SQ Zynq基板の回路図データをGPT-6 Astraへ渡しました。
使用するZynq、クロック、LED、スイッチ、メモリ、USB、UARTなどの情報は回路図に含まれています。
その状態から、日本語で新しいプロジェクトの作成を依頼しました。
今回のテストでは、基板上にRGB LEDがあったため、
「RGB LEDを1秒ごとに順番に点灯させる」
という内容を指示しました。
人間が行った主な作業は次のとおりです。
- 5SQ Zynq基板をUSBでPCへ接続する
- 回路図データを渡す
- 日本語でテスト内容を指定する
- AIの作業報告を確認する
- 一度だけVivadoを開いて設計内容を確認する
- 実機上のRGB LEDが指示どおり点灯するか確認する
細かなTclコマンドやIP Integratorの操作を、私が一つずつ入力したわけではありません。

最初からZynqに合わせた設計が作られた
今回大きかったのは、最初からZynqを前提とした構成で設計が進んだことです。
従来のChatGPTだけの作業では、ZynqのPS、PL、IP Integratorの関係を正しく反映できず、途中で行き詰まることがありました。
今回は、AMD RossのVivado MCP、AMDナレッジベース、Agent Skillsが利用できるため、GPT-6 AstraがAMDのツールや設計情報へアクセスしながら処理を進めました。
AMDの公式資料でも、Rossを使ったプロジェクト作成、Block Design、IP統合、RTLからビットストリーム生成、実機検証などが対象ワークフローとして示されています。
実際の作業では、Zynqのハードウェア構成だけでなく、ARM側で動かすプログラムも生成されました。
私はVitisを一度も開いていません。
それでも、ハードウェア作成、CPU側のプログラム作成、JTAG経由の書き込みまで進み、基板上のRGB LEDが指定した順番で点灯しました。
「ChatGPTだけで終わった」の正確な意味
今回、操作している感覚としては「ChatGPTだけで全部終わった」と言ってよいものでした。
ただし、VivadoやVitisというツール自体が不要になったわけではありません。
実際には、GPT-6 AstraがAMD Rossを通してVivadoなどのAMDツールを操作しています。論理合成、配置配線、ビットストリーム生成、ソフトウェアのビルド、JTAG書き込みなどの処理は、従来どおりAMDのツールチェーンが担当します。
AMDの導入資料でも、必要なAMDツールをインストールし、MCP対応クライアントから接続する構成が示されています。
今回変わったのは、
「VivadoやVitisがなくなった」
ということではなく、
「人間がVivadoやVitisのGUIを直接操作する場面がほとんどなくなった」
ということです。
私がVitisを一度も開かなかったとしても、裏側ではVitisを含む開発環境が使われています。
この区別は重要です。
発生したエラーもAIが調査して修正した
今回の作業も、最初から最後まで完全にエラーなしだったわけではありません。
途中で一度エラーが発生しました。
以前であれば、そのエラーログをコピーしてChatGPTへ貼り付け、原因を質問し、回答を見ながら自分でVivadoを操作して修正していました。
今回は、その流れも変わりました。
GPT-6 AstraはAMD Rossを通してエラーを取得し、AMDのナレッジベースを調べ、問題箇所を特定して修正しました。その後、処理を再実行して先へ進みました。
AMD Rossには、AMDの公開資料を検索するナレッジベースが用意されています。公式説明でも、エラーメッセージの解析、ツールコマンドの実行、問題の調査、設計最適化などが主要な用途として挙げられています。
人間がエラーを別の画面へコピーして説明する必要がなくなり、AIが現在のツール状態とログを確認しながら修正できるようになった点は大きな違いです。
Vivadoを開いたのは確認のためだけだった
今回、Vivadoは一度だけ開きました。
設計作業を進めるためではなく、GPT-6 AstraとAMD Rossが作った内容を人間が確認するためです。
IP Integratorの構成、クロック、ピン設定、生成されたプロジェクトなどを確認しました。
その後はVivadoを直接操作せず、GPT-6 Astraとのやり取りを中心に作業しました。Vitisについては、一度も開いていません。
それでも最終的には、JTAG経由でプログラムが書き込まれ、RGB LEDが実際に動作しました。
今回の範囲では、次の工程を自然言語から進められたことになります。
- 回路図から基板構成を確認する
- Zynq用のVivadoプロジェクトを作成する
- PSとPLを含むハードウェア構成を作る
- RGB LED用の回路を作る
- ARM側のプログラムを作る
- ビルド中のエラーを調査して修正する
- JTAG経由で実機へ書き込む
- RGB LEDの点灯を人間が確認する

AIが行ったことと、人間が判断したこと
今回、GPT-6 AstraとAMD Rossが行った主な作業は次のとおりです。
- 回路図データの読み取り
- Zynq用プロジェクトの作成
- PSとPLを含む設計構成の作成
- RGB LEDを制御する回路の作成
- ARM側プログラムの作成
- Vivadoなどのツール実行
- エラーログの取得
- AMDナレッジベースを使った原因調査
- 問題箇所の修正
- 再ビルド
- JTAG経由の書き込み
一方、人間が行った作業と判断は次のとおりです。
- 使用する基板と回路図を指定する
- テスト内容を決める
- RGB LEDの点灯条件を指示する
- USBケーブルを接続する
- Vivadoで生成結果を確認する
- 実機のRGB LEDを目視確認する
- 今回の結果を採用できるか判断する
AMDも、Rossの出力や提案について、最終的に利用者が確認する必要があると明記しています。また、AIワークフローは非決定的であり、モデルやプロンプトによって結果が変わる可能性があります。
FPGA開発の常識が変わり始めた
今回の結果は、私にとってかなり衝撃的でした。
半年前までの感覚では、Zynqを開発するにはVivadoのIP IntegratorとVitisの操作を覚え、エラーが出るたびにログを調べ、PSとPLの両方を扱う必要がありました。
今回は、日本語で目的を伝え、回路図を渡したところから、実機のRGB LEDを点灯させるところまで進みました。
VivadoやVitisの内部を理解する必要が完全になくなったとは思っていません。性能、タイミング、クロック、AXI、DDR、高速インターフェースなどを追い込む場合には、設計者が詳細を確認する必要があります。
一方、LED、スイッチ、UARTなどを使った基本的な周辺回路の確認では、人間がGUIを操作する時間は大幅に減らせそうです。
FPGA開発ツールが不要になるというより、人間と開発ツールの間にAIエージェントが入り、操作方法そのものを覚える負担が小さくなっていくのだと思います。
半年後、1年後にはさらに変わりそうだ
ここからは、今回の結果を見た私自身の予測です。
この進化が続けば、半年後や1年後には、よほど複雑な設計でない限り、VivadoやVitisのGUIをほとんど直接操作せずに開発できる範囲がさらに広がると思います。
もちろん、タイミングクロージャ、DDR調整、高速シリアル、信号品質、実機デバッグなど、設計者の経験が必要な領域は残ります。
それでも、プロジェクト作成、IP接続、ソフトウェア生成、ビルド、エラー修正、実機書き込みといった繰り返し作業をAIへ任せられるだけで、FPGA開発の入口は大きく変わります。
これまで「VivadoやVitisの操作が難しい」という理由でFPGAを避けていた人でも、自然言語から試せるようになる可能性があります。
今回、5SQ Zynq基板で実際に動かしてみて、FPGA開発の世界がまた一段変わったと感じました。
「これから変わる」というより、自分の作業環境では、すでに変わり始めています。
English Summary
This article describes my first practical use of GPT-6 Astra together with the AMD Ross Agentic AI Assistant to develop and test a peripheral function on a custom 5SQ Zynq board.
Previous ChatGPT-based FPGA development worked relatively well for devices such as Spartan-7. However, Zynq development was more difficult because it required Processing System configuration, IP Integrator, hardware generation, and processor-side software development.
For this test, I provided the schematic data for my 5SQ Zynq board and requested, in Japanese, that its RGB LED cycle through its colors at one-second intervals.
GPT-6 Astra used AMD Ross capabilities to create the Zynq project, configure the hardware, generate the processor-side program, run the AMD development tools, investigate a build error, apply a correction, and program the board through JTAG.
I opened Vivado only once to review the generated design and did not open Vitis at all. The RGB LED then operated on the actual board as requested.
This does not mean that Vivado and Vitis are technically unnecessary. The AMD toolchain still performs synthesis, implementation, software build, and device programming behind the scenes. What changed was that I no longer needed to operate those tools directly for most of this workflow.
The human designer still selected the test, connected the hardware, reviewed the generated design, observed the physical result, and decided whether the result was acceptable.
Based on this experience, I believe AI agents will increasingly become the primary interface to FPGA development tools, while direct GUI operation will remain important for advanced optimization, timing closure, high-speed interfaces, and detailed debugging.

